社会人1年目

学習記録用ブログです。引用乱用ですので、興味がある方は引用先へどうぞ。

小売業のグローバル展開とセブン-イレブンの成功要因

論文を読んで、模写して、構造を砕いて、

論理的文章を書けるようになろうの1回目。

 

2015年7月
グローバルビジネス学会 第3回グローバルビジネス学会全国大会
正会員 京都大学経営管理大学院 特別教授
碓井
 http://opinion.co.jp/education_seminar/pdf/global_retailers.pdf

 

上記の論文を今日は読んでみました。

 

 

自分的要約

 ◎SCMが変化し、1社がガッツリ行う

 「製造販売型小売業」という新たなビジネスモデルが誕生

 ▼トップレベルの小売は下記さえ行う

 ①新しい価値の提案

 ②商品の開発

 ③情報を循環

 ④ITを活用

 ⑤オープンイノベーションで協業

 

◎セブンーイレブンがグローバル展開に成功した理由は

 基本戦略戦略を軸に徹底して施行するも、

 各国の環境に合わせて戦略を柔軟に変えてきたこと。

 

構造読解

 

 <サマリー>――――――――――――――――

 ■現状

 小売業はドメスティックな産業だと言われてきたが、新興国も含めた消費動向、経済成長、価値観の変化を背景に、グローバル産業としての展開が広がっている。

■課題

 グローバルリテーラーに共通する特徴の一つは、バリューチェーン一気通貫でデザインした事業インフラの強さと柔軟性である。特に近年サプライチェーンの革新は、新たなサービスと競争力の源泉となっている。

■内容

 本稿ではグローバルリテーラーの主要な動きを概観すると共に、日本の小売業の海外展開の少ない成功事例であるセブン-イレブンの事例を分析する。又、直近でのアジアでのコンビニエンスストアの進化も参考となる点が多く、セブンーイレブン・ジャパン方式との関連についても考察を加えたい。

 

<キーワード>―――――――――――――――

・グローバルリテーラー

・小売フォーマットのイノベーション

・サービスイノベーション

コンビニエンスストア

・セブンーイレブン

 

<本文>――――――――――――――――――

 

サプライチェーンに大きな変化

■現状のSCM の説明

 サプライチェーン(SCM)の革新は、サービス社会の広がりや、製造業も含めたサービス化やグローバル化の中で、新たな段階を迎えている。

■核心

 特に小売業に於けるSCMの変化は、製造販売型小売業という新たな産業モデルを定着させている。

■核心を裏付ける事例

 小売業はドメスティックな産業と言われてきたが、近年グローバルリテーラーの成長は著しい。ウォルマート(米国 4769憶ドル/13年売上)、テスコ(英国 1047憶ドル/同)、カルフール(フランス 1033憶ドル/同)などのトップリテーラーは海外展開に力を注ぐだけでなく、PB商品化率もウォルマート 40%、テスコ 50%と極めて高い。ウォルマートのPB売上のみで、食品製造業トップのネスレの倍の規模となっている。又、売上大手リテーラーは、PBのみならず商品調達、物流などのSCM領域で強い競争力を持ち市場シェアも 10~25%と極めて高い。

 一方、世界の大手小売業純利益率ベスト3を見ると2013年度の純利益率、純利益額順位、売上順位は、インディテックス(スペイン ZARA等 14.2%、8位、51位)、LVMH(フランス ヴィトン 13.5%、2位、29位)、H&Mスウェーデン 13.3%、9位、56位)となっており、8位にファーストリテイリングが純利益率7.9%で続いている。純利益率トップ10は6社迄がアパレル系であり、5社がSPA(Specialty Store Retailer of Private Lavel Apparel)モデルである。

■セブンーイレブンでは

 ちなみに、セブン&アイホールディングスのポジションは売上高534憶ドル21位、純利益率3.1%程度であり、グループ内で利益の80%を生んでいるセブンーイレブン・ジャパンのみが、PB化率も60%程度と製造販売型小売業として、SCMの強みを発揮している。

■核心再掲

 概観した様に世界のトップ小売業は、製造販売型小売業を中心に、商品開発、生産、生産管理物流等のSCM領域を強化しており、サプライチェーンに大きな変化と広がりが生まれつつある。

 市場の顧客ニーズを反映したマーケティング、ディマンドチェーン(DCM)のオペレーションクオリティの向上、物の提供を超えた新たな価値提案の重要性が増す中で、SCMとDCMの新たな連携強化を図るバリューチェーン垂直統合の進化が著しい。そして、ここにはいくつかの共通した動きがある。

■変化①

 まず第一の変化は、新たな価値提案であり、単に物を売る小売業ではなく、生活者の問題や新たなニーズに応えるソリューション提供である。提案領域のセグメントを明確にすると共に、サプライヤーが作ったものを売る販売代理型小売業から、生活者の立場に立った購買代理型小売業(価値協創型)への転換である。

■事例

 このセグメントは、ウォルマートでは「SAVE MONEY LIVE BETTER」、生活日常品を中心にすべての商品を安く提供するワンストップサービスであり、これを支える「顧客志向の価値とサービスの実現」のモットーである。

■セブンーイレブンでは

 セブンーイレブンでは、日常生活ですぐ必要な商品とサービスを顧客の近くで365日24時間提供する「近くて便利」の利便性と、これを支える「単品管理」の考え方である。

■変化②

 第2のポイントは、ソリューションを提供する為の独自の商品開発力である。

■事例

 ユニクロは、インナーとべーシックアイテムにセグメントを絞り、1シーズン200品目の商品を「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」の店名コンセプトの下に提供している。素材、製品の新たな開発を含め、いつでも身近に活用できる倉庫としてのサービスの提案である。

  ZARAは、トレンドファッションにセグメントを絞り、パリコレ、ミラコレ、ストリートファッショントレンドを折り込んだアイテムを1シーズン3回、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の売場展開も含めてコーディネート提案している。これを支えるデザインー生産ー物流ー売場展開を3週間で実現するサプライチェーンインフラがSPAの最強モデルの世界展開を可能としている。

■変化③

 第3のポイントは、バリューチェーン循環型モデルとして組み立てている点である。

■事例

 テスコ型の顧客購買分析に基づく商品開発や品揃え、顧客セグメント別のプロモーションシステムも循環が重要な要素である。

■セブンーイレブンでは

 セブンーイレブンの1日1700万人のPOSデータと、約2000人のスーパーバイザー(店舗支援カウンセラー)から毎週上がる市場・顧客情報を活用した商品開発やプロモーション提案も、情報の循環をメーカー、問屋、物流とも毎日共有するサプライチェーンの仕組みの上で成り立っている。

■事例

 ZARAの朝夕2回の店舗営業報告や、ユニクロの毎週の個別チラシを通した顧客リレーションと個店対応も、顧客との密接な関係性の構築と循環型バリューチェーンの上で効果を生んでいる。

■変化④

 第4のポイントはオープン・イノベーションとIT活用である。

■事例

 ウォルマートサプライヤー連携であるCPFR(Collaborative Plannning Forecasting and Replenishment)を進める為のリテールリンクシステム、セブンーイレブンのファーストフードの生産管理や、原材料ー生産ー問屋ー物流を連動する取引先総合情報システムは、サプライヤーと一体となったバリューチェーン連携を実現している。一方、インディテックスの強力な自社工場を中心とした生産システムや世界7000店へ受注後8時間出荷、欧州24時間以内、日本72時間以内店着の強力な物流システムは新しいサプライヤーチェーンの自前構築モデルである。H&Mユニクロでは、外部パートナーとの連携で工場運営の強化や、東レユニクロ共同での素材開発等、オープンイノベーションによるサプライチェーンの進化も進んでいる。

 

②セブンーイレブンのグローバル展開の成功要因

 ■考察内容

 グローバルリテーラの成功要因を概観したが、続いてセブンーイレブンの海外展開の成功要因とその共通性について考察を進める。

■現状説明

 セブンーイレブン・ジャパンはチェーン売上358億7800万ドル(13年)であるが、本部企業としての売上は64億8800万ドル、純利益は19.77%に上り、フランチャイザーである点では小売専業との単純比較はできないが、インディテックスを上回る数字を示している。

 海外展開ではエリアフランチャイザーであるサウスランド社(現、セブンーイレブン・インク)の倒産を受けて、1991年にセブンーイレブン・ジャパンが取得して再建を図っている。現在セブンーイレブン・インクは売上184億2900万ドル(13年)純利益3億400万ドル(13年)を上げるに至っている。

 続く海外展開は2004年の中国である。現在285店と展開は少ないが、ファーストフード、デイリー商品が充実した日本型コンビニとして差別化を図っている。セブンーイレブンは世界5万2433店を展開しているが、上記の米国と中国の一部のみがセブンーイレブン・ジャパンの子会社であり、日本を含め、2万4955店を直接運営している。

■現状に至るまでの過程(成功トピックス)

 米国での再建は「店舗リモデリング」、「物流施設の売却とアウトソーシング、チルド共同配送設立」、「フレッシュフードの開発」、「単品管理への取組と情報共有の向上」、「情報システムの刷新」の5つの施策を日米合同の再建プロジェクトの下に推進した。1993年から1998年まで定常的に情報システム部門中心のプロジェクトは日本メンバー5~6名のダラス常駐体制で進められ、総合情報システムの導入をもって終了したが、今も現地NECやセブンーイレブン・ジャパンによるサポートや支援は続いている。

 一方中国での展開は2004年、北京よりスタートしている。「中国での本格的なコンビニの展開、流通小売業の活性化とインフラ整備、業務プロセスの確立」、「単品管理、基本4原則」、「チームマーチャンダイジング(サプライヤと連携した商品開発)とファーストフード、オリジナル商品の開発」の3つの施策を軸に展開を進めている。出店の難しさ、フランチャイズ規制や特殊要因もあるが、基本的には日本方式を現地の社会インフラ、事業インフラと、市場、顧客のニーズや発展段階に応じて購入、カスタマイズして成功を収めるに至っている。

■比較

 セブンーイレブンの日本、米国、ハワイ、中国のパフォーマンスを示すが、施策の徹底度により成果の違いも見てとれる。

 例えば米国とハワイは買収以前はサウスランド社として一体であったが、1991年に先行して買収し再建したハワイは、商品売上の平均日版が2011年には50万円とセブンーイレブン・インクの38万円を大きく上回っている。元々ハワイは米国本土に大きく差をつけられていたが、単品管理、商品開発等への日本方式の導入・展開が効果を上げたと言える。現在も企業としては別法人であり両者共に米国人の経営の下にあるが、コンピュータシステムは同一の仕組みを活用している。

 こうした基本戦略の徹底度合いによる差は、中国でも日本でも明確に表れている。ファーストフードやデイリー品の商品構成と平均日販の相関図を示しているが、どの国でもファーストフードやデイリー品という、店舗の特徴と差別化を生み出すオリジナル商品の強いチェーンが平均日販も高いという結果が出ている。日、米、中国でセブンーイレブンは共に顧客の支持を受け、成功を収めているが、そこには共通する成功要因として3つの基本戦略が実践れている。

■核心

 セブンーイレブンの基本戦略である、「顧客の立場での品揃えと提案」、「商品開発とサービス開発」、「市場・顧客とサプライチェーンの連動」、この3つの基本戦略は各国で共通して位置付けられている。そして、セブンーイレブンの強味は、この戦略を各国の状況に応じているところにあると言える。

■核心の説明

 セブンーイレブンのイノベーションのグローバル展開に見るこの成功要因を図示したものである。上部の「市場・顧客、直接的サービス領域」は環境や国毎の違いがある。下部の「事業インフラ」にも社会的制約や整備状況の違いがある。セブンーイレブンのイノベーションは、この両者に各国の状況に応じてバランスよく対応するメカニズムを持つことにより、グローバルな展開にも成功することができた。

 セブンーイレブンのイノベーションの3つの成功要因である「単品管理と仮設ー検証型マネジメント」「チームマーチャンダイジングとオリジナル商品開発」「業務プロセスデザインとIT活用」は、既に説明した通り、ビジネス改革やイノベーションの方法論でもあり、事業戦略の具体化である。

■核心再掲

 イノベーションは1つの出来上がった型ではなく、環境変化に対応する方法論やその活用ノウハウを組み込んだメカニズムである。今回のまとめの中で、個々の手法の詳細を説明することは出来なかったが、各国での成功の背景には共通の戦略の環境に応じた適用と実行のメカニズムが重要となる事が確認できたと言える。

 

③アジアにおけるセブンーイレブンの成長

 ■考察内容

 日本方式の展開の成果をセブン―イレブン・ジャパンの傘下の企業の中で見てきたが、アジアのセブンーイレブンもまた大きく進化している。

■事例

 日本、台湾、タイにおいては、セブン―イレブンが小売業No1の位置にあり革新を図っており、「仮説ー検証と単品管理」の領域は道半ばではあるが、積極的な商品開発とオリジナル商品の開発や、日本のIT企業やコンサルタントからの支援も受けている情報システム等の共通性も高い。セブンーイレブン台湾は、店舗の大型化、ファーストフードの拡充、イートンインコーナーの本格導入等、日本とは異なる差別化で先行し、飽和感のある台湾市場での新たな進化を遂げている。セブン―イレブン・タイは食品コングロマリットであるCP(チャローン・ポカパン)グループを背景にサプライチェーン連動の強力な小売グループも形成している。

 ■今後の展開

 アジアのセブン―イレブンの展開とその成功要因もセブンーイレブン・ジャパンの成功要因との共通性も高く、日、米、中国での展開で見た様に各国の状況に応じたイノベーションの実行メカニズムとしての施策展開の徹底度が成果につながるものと思われる。